2025/07/30

神酒の海(Mare Nectaris)—月面に広がる神話と科学の交差点(6月1日撮影)

 神酒の海は、直径約333kmの円形の「月の海(mare)」で、ギリシャ神話に登場する神々の飲み物「ネクタール」にちなんで名付けられました。その名の通り、科学的な魅力と詩的な響きを併せ持つ場所です。
地質学的な特筆点
 約38.5億年前、巨大隕石の衝突によって形成された盆地で、ネクタリス代から前期インブリウム代にかけて誕生しました。表面は後期インブリウム代の地層に覆われており、月の地質史を語る重要な証拠となっています。周囲にはアルタイ断崖ティオフィルス、キリルス、カタリナなどの印象的なクレーターが点在し、地形的にもドラマチックです。また、フラカストリウス、ダグエレなど多くの埋没クレーターが点在しています。
探査と現代の関心
 2024年、JAXAの小型月着陸実証機「SLIM」が神酒の海の西にあるキリルス・クレーター内の付近に着陸しました。直径わずか0.27kmの新しいクレーターが誕生し、SLIMの高精度着陸技術の象徴として「栞(Shioli)」クレーターと命名されました。日本の月探査における新時代の幕開けとされ、神酒の海がその舞台となったことは象徴的です。
撮影条件SW DOB16 ニュートン式反射/SW EQ8R赤道儀/SWコマコレクター (F4-5用)/テレビューパワーメイト 2.5 x (合成f 4500mm F 11.25/バーダーIRパスフィルター695nm/ ZWO ASI 178MM CMOSカメラ 200フレーム/10秒、2025年6月1日19時23分44秒、自宅にて。

2025/07/09

月面の色彩(4月7日)

 
 月面の色彩は、通常のカラー画像では目立ちませんが、色を強調する処理を施すことで、微妙な色の違いが浮かび上がります。大気による光線の吸収ができるだけないように天頂近くに高く昇った月齢9の月を対象に、ZWO社製ASI 183MC CMOSカラーカメラで撮影した画像をモザイク化しこれに彩度の強調処理を行いました。右側がPhotoshop CCで彩度を強調したもの、左側はカラー情報を破棄したのちに同様に彩度強調した(彩色されないことを確認)ものです。南(下)部の山岳地帯(クレーター密集地帯)と北(上)部の「氷の海」とその周辺は薄い茶に、晴の海は、縁が青でそれ以外の中心は茶に、「静かの海」、「豊かの海」は青色に染まっています。この違いは、主に海を形成する玄武岩の化学組成の違いに起因します。「静かの海」はチタン(TiO₂)含有量が高いので 青色が強くなり、「晴の海」はチタン含有量が低く鉄分が多いため 赤み強くなります。鉱物組成の違いが色彩に反映されており、これは月の火山活動の履歴マントルの化学的多様性を示唆しています。

撮影条件:スカイウオッチャーDOB16 ニュートン式反射 (D400mm、f1800mm)/スカイウオッチャーEQ8R赤道儀/ZWO ASI 183MC CMOSカラーカメラ 露出10秒/200フレーム、2024年4月7日21時54-58分、50コマ/35秒動画を処理。5枚の静画5枚をモザイク化。自宅にて。