2026/04/27

春の南天銀河(5)ー「M89 M90などを含むおとめ座銀河団」ー (3月14日)

    今回撮影したのは、しし座の東側に広がる「おとめ座銀河団」の一角です。 この領域は、春の夜空でもっとも銀河が密集するエリアのひとつで、視野の中に複数の系外銀河が同時に写り込むことで知られています。Seestar S50 の小さな視野でも、M89・M90 を中心に多くの銀河が同視野に収まり、観察・撮影ともに非常に面白い対象です。主役となる M89(NGC 4552)M90(NGC 4569) に加えて、NGC 4584、NGC 4531、IC 3475、NGC 4550 など、焦点距離 250㎜ とは思えないほど多くの銀河が確認できます。すべておとめ座銀河団に属するメンバーで地球から約 5000〜6000 万光年の距離に位置しています。M89 は球状に近い楕円銀河で、外側に淡いハロー構造を持つことが知られています。 一方、M90 は渦巻銀河でありながら銀河団内のガス環境の影響で星形成が抑制されている可能性が指摘される、科学的にも興味深い天体です。

今回の撮影では、122〜132 分の長時間スタックにより、肉眼では到底見えない淡い銀河まで浮かび上がりました。自宅の庭という光害環境にもかかわらず、Seestar S50 と適切な処理によって、銀河団の奥行きと広がりを感じさせる写りになっています。画面内に写り込んだ銀河の名称を正確に示すため、Seestar の画面表示を並置しました。春の銀河祭りと呼ばれる季節の醍醐味が、小さなスマート望遠鏡でもしっかり味わえることが分かります。

撮影機材:Seestar S50
撮影日時:2026年3月14日03時20分~露出(スタック時間):132分、
撮影場所:自宅庭

2026/04/23

春の南天銀河(4)ーM58 から「抱き合う銀河 (NGC45687 + NGC4568)」 までを一望するおとめ座の銀河領域 (3月14日)

 おとめ座銀河団の一角にあるM58NGC4579 から、下方に並ぶ NGC4567NGC4568(シアミーズ・ツインズ) までを一枚に収めました。銀河団の中でも性質の異なる銀河が同じフレームに並ぶことでおとめ座銀河団の多様性と立体構造が伝わる構図です。

画面右上の M58 は、銀河団の中でも明るい渦巻銀河で、活動銀河核(AGN)が強く輝いています。中央付近の NGC4564 は細長い形が特徴の楕円銀河で星形成を行わない年老いた恒星が主体です。画面下部の NGC4567(右)と NGC4568(左) は、互いに重なり合うように見えることから “Siamese Twins(シアミーズ・ツインズ)と呼ばれる有名な衝突銀河ペアです。

撮影機材:Seestar S50

撮影日時:2026年3月14日05時46分~

   露出(スタック時間):60分、撮影場所:自宅庭

春の北天銀河(13)ーNGC4725ー (3月12日)

                                         
NGC4725 は、かみのけ座に位置する距離約 4,000 万光年の棒渦巻銀河で、視直径は約 10 分あり、比較的大きく写る天体です。同じ星座には黒眼銀河 M64 という有名な銀河がありますが、NGC4725 も負けず劣らず魅力的で、今回の画像でも、明るい核の周囲に淡くまとわりつくような銀河の腕がかすかに写り、特有の“片腕構造”が柔らかい光のグラデーションとして浮かび上がっています。

撮影機材:Seestar S50
撮影日時:2026年3月12日00時41分~
露出(スタック時間):60分、撮影場所:自宅庭

2026/04/22

春の北天銀河(12)ーNGC3344ー (3月11日)

     NGC 3344 は、こじし座に位置する美しい“正面向き(フェイスオン)”の渦巻銀河で、春の夜空を彩る隠れた名品です。中心から広がる渦巻腕が均整の取れた円形に広がり、“銀河らしさ”がとてもよく表れています。腕の中には星形成域が点在し長時間露光すると淡い外縁部まで浮かび上がってきます。また内部の棒状構造が渦巻腕の形成に影響していると考えられ、周囲には淡い外周リング状の構造もあり、撮影してみると想像以上に“奥行きのある銀河”であることが分かります。 
 今回の撮影でも、Seestar S50 の61回画像スタックによって、中心部の輝きと渦巻腕の柔らかな広がりが写り、春銀河らしい端正な姿がとても印象的です。
撮影機材:Seestar S50
撮影日時:2026年3月11日23時12分~
露出(スタック時間):61分、撮影場所:自宅庭

2026/04/17

パンスターズ彗星(C/2025 R3)(4月16日)

 夜半まで降り続いた雨が上がり、日本からの観測可能高度が限界に近づく中で、明け方の空にパンスターズ彗星 C/2025 R3 が姿を現しました。4分間のスタックでも核の移動量が明瞭に写り、これまでより自転・噴出活動が活発化していることを示唆します。核と尾の光度も増し、イオンテールとダストテールがわずかに異なる方向へ伸びる様子から、太陽風と放出粒子の応答が強まっていることが読み取れます。日本から観測できるタイミングとしてはすでにリミットに近く、近日点へ向かう変化の過程を捉えた貴重な一枚となりました。

撮影機材:Seestar S50
撮影日時:2026年4月16日4時09分
露出(スタック時間):4分
撮影場所:自宅庭

2026/04/15

パンスターズ彗星(C/2025 R3)(4月12日)

引き続きSeestar S50で撮影した4月12日のパンスターズ彗星(C/2025 R3)です。核の明るさ増強、尾の複雑化・長大化など、近日点(4月19日)に近づきつつあることが実感として伝わってきます。近日点通過後は北半球では観測が難しくなるのであと数日が頑張りどころです。

2026/04/14

パンスターズ彗星(C/2025 R3)(4月9日)

    引き続きSeestar S50での撮影です。パンスター彗星(C/2025 R3)は さらに南に移動しペガサスの四角形に深く入り込んできました。尾のイオンテイルとダストテイルの違いがはっきりし、核に対して短いながら真っすぐに伸びているダストテイルと、西側(右側)にややカーブするイオンテイルが見えています。
撮影機材:Seestar S50
撮影日時:2026年4月9日4時26分
露出(スタック時間):9分、撮影場所:自宅庭

2026/04/08

パンスターズ彗星(C/2025 R3)文字通り彗星のごとく初お目見え(4月8日)

 東南東の山の端にひょっこり現れたパンスターズ彗星(C/2025 R3)です。Seestar S50による撮影です。肉眼では確認できないので雑誌の予報通り8等級前後でしょうか。青緑の明るい核、細くて長い尾が非常に印象的です。4月19日の近日点通過までは益々明るくなり、長い尾を引いた大彗星になることを期待しています。残念ながらその後は北半球からの観測は困難になるそうです。それまでの10日間の好天を願うばかりです。

撮影は2026年4月8日4時28分から11分間、自宅庭にて(岐阜市)。



 

2026/04/06

去り行く冬の星雲 (5) ― オリオン大星雲(M42, M43) (2月19日)

                                                                                              

 オリオン大星雲(M42+M42)はあまりにも有名で、しかも写りが良すぎるためか、意外とブログで取り上げる機会が少ない対象です。そろそろ見納めの季節ということもあり、今回は思い切って長時間露出に挑戦してみました。さらに軽くウェーブレット処理を施し、細部の解像感を引き出す試みも行っています。
定番の天体ではありますが、撮影条件や処理によって表情が大きく変わる奥深い対象だと、改めて実感しました。


去り行く冬の星雲 (4) ― くらげ星雲(IC443) (2月21日)

                                                                                         

くらげ星雲(IC 443)は、ふたご座の足元にある恒星 η Gem(プロプス)の近くに位置する超新星残骸で、地球から約 3,0005,000 光年の距離にあります。数万年前に大質量星が爆発した名残で、単純な球状ではなく、高速で外側へ広がる衝撃波と分子雲に衝突して減速した衝撃波が重なり合う「二重構造」を持っていて、折れ曲がったフィラメント状の構造を描き出しています。その姿がクラゲのように見えてこの愛称で呼ばれています。非常に淡いため、全貌を写し切るには長時間露光が欠かせません。今回、Seestar S50 を用いて 103 分間のスタック露出を行ったところ、およそのくらげの輪郭を捉えることができました。

  


2026/04/05

春の北天銀河(11) ーIC2574 淡く広がるおおぐま座の不規則銀河ー(3月4日)

                      

  IC2574は、おおぐま座の北部に位置する長径約13分の大型ながら、銀河全体が淡い星間ガスに包まれた不規則銀河です。視野に入れてもその存在に気づきにくいのですが、長時間露光によってその独特の姿が浮かび上がってきます。銀河内部には、過去の激しい星形成活動によって生じた巨大な空洞構造が広がり、周囲に若い星団やHII領域が点在しています。M81、M82周辺の銀河群の一員でありながら非常に淡いため、撮影は空の透明度や露光時間が大きく影響します。今回は透明度の良さもあってか、Seestar S50による長時間撮影で淡い不規則銀河の姿をなんとかとらえることができました。深宇宙の静けさの中に潜むダイナミックな星形成をご想像ださい。

2026/04/04

春の北天銀河(10)ー黒眼銀河(M64/NGC4826)ー (2月21日)

                    

    黒眼銀河(M64)は、地球からおよそ 1,700万光年 離れたおとめ座の渦巻銀河で、中心部を取り巻く 濃い暗黒帯(ダストレーン) が“黒い瞳”のように見えるのが最大の特徴です。この暗黒帯は、銀河の外側と内側で 回転方向が逆 という特異な構造に関連しており、過去に小さな銀河を飲み込んだ痕跡と考えられています。

去り行く冬の星雲 (3) ― モンキーフェース星雲(NGC2175) (2月21日)

                                                                                              

 1月26日にもSeestar S50で撮ったモンキーフェイス星雲の画像を掲載しています。あの時は露出時間(有効スタック時間)11分でしたが短かったので、今回は37分に延長しました。解像度の上昇は明らかです(1月26日掲載の当ブログ参照)。



 

春の北天銀河(10) ーしし座のもう一つのトリオ銀河ー(M95, M96, M105)(2月19日)

 春のしし座には、M95・M96・M105というタイプの異なる銀河が集まる興味深い領域があります。今回、Seestar S50の同一視野内で撮影し、それぞれの銀河の形が分かるように2倍拡大した画像も並べてみました。M95とM96はいずれも約3,500万光年先にある渦巻銀河です。M95は棒渦巻構造が特徴で、直径は約3万光年。一方のM96はやや非対称な腕を持ち、直径は約10万光年と我々の天の川銀河系に匹敵します。対照的に、M105は楕円銀河で、同じく約3,500万光年の距離に位置します。星形成がほとんど見られず、年老いた恒星が集まる静かな銀河で、中心には超大質量ブラックホールが存在することが知られています。同じ空域に渦巻銀河と楕円銀河が並ぶこの一帯は、春の銀河観察のハイライトのひとつ。40分露光で浮かび上がるそれぞれの個性を、ぜひ拡大画像と合わせて楽しんでください。

2026/04/03

春の北天銀河(9)(NGC4449/C21)(2月20日)

                                                                                      NGC 4449(C1銀河)は、りょうけん座に位置する不規則銀河で、地球から約1,200万光年の距離にあります。見かけの大きさは 6.2’×4.4’、明るさは 9.4 等級。小型望遠鏡では淡い光のかたまりに見えますが、長時間露光を重ねることで内部の複雑な構造が浮かび上がります。「不規則銀河」と呼ばれるのは、渦巻銀河のような腕や楕円銀河のような滑らかな形がなく星形成領域が散在し、形がいびつに見えるためです。周囲の小銀河との相互作用が原因と考えられており、星が活発に生まれている領域があります。今回のSeestar S50による撮影でも、小口径ながら星形成域の明るい斑点や不規則な輪郭がしっかり写り、NGC 4449らしい“荒々しい姿”が現れました。                                                   


プチ遠征に代わるSeestar S50の活躍(4月2日)

       

 今年の桜開花宣言は岐阜が全国で一番でした。プチ遠征先の本巣市市根尾(車で40分)には天然記念物に指定されている樹齢1500年の”薄墨桜”(うすずみざくら)があります。この桜も例年より早く満開となり、先日、花見に出かけてきました。(上:満開の薄墨桜)。昨今はクマの出没リスクがあって根尾にはほとんど出かけていないので、多少明るい自宅の夜空でも撮影してくれるSeestar S50の存在が大きくなっています。Seestarを観測小屋の屋根に持ち上げて視界を広げ、銀河、星雲の撮影を楽しんでいるところです(下:小屋の屋根端)。

2026/04/01

去り行く冬の星雲(2) ― ハート星雲(IC1805)と魚頭星雲(IC1795/NGC896)

                            
冬の名残を照らすように、カシオペア座に広がるハート星雲(IC1805)と魚頭星雲(IC1795/NGC896)。これらは約7,500光年彼方に位置する巨大な電離水素領域で、若い大質量星が放つ強烈な紫外線によってガスが輝く「HII領域」として知られています。北天の高い位置にあるため季節の移ろいを感じにくい存在ですが、春が近づくにつれ観望の条件は少しずつ厳しくなります。赤く淡い光をまとった星雲の姿は、星々が生まれる現場のダイナミズムと、冬の終わりの静けさを同時に映し出しているようです。