2026/01/28

冬の月面拡大 (2) ー月面南部、静かなる競演──リリウスとジャコビ(2025年12月28日)

 
    望遠鏡の視野をゆっくりと南へ流していくと、月面の表情が変わります。荒れた高地、重なり合う古いクレーター群。その中に、ふと目を引く二つの輪郭が現れます。リリウスジャコビ──まるで月の舞台で静かに競演する、二人の個性派俳優のようです。

    リリウスは、整った円形と明瞭な中央丘を持つ、典型的な複雑クレーター。直径約62km、周壁は比較的保存状態が良く、太陽光の角度によって陰影がくっきりと浮かび上がります。まるで「これが理想のクレーターだ」と言わんばかりの端正な姿。観測者の目には、月面の古典美を体現する存在として映ります。

 一方のジャコビは、リリウスの南東に寄り添うように位置し、やや崩れた周壁と複雑な内部構造を持っています。直径は約68kmと少し大きく、内部には小丘や断層のような地形が見られます。形は不均一で、どこか荒々しく、しかしその不完全さが逆に魅力となっています。まるで「私は私のままでいい」と語りかけてくるような、月面の個性派です。

     この二つのクレーターは、科学的にも興味深く、リリウスは衝突後の反発によって形成された中央丘を持ち、周囲の小クレーター群からは古い地形であることがうかがえます。ジャコビは後続の衝突や地殻変動の影響を受けた痕跡があり、月面の地質史を物語る複雑な構造を見せてくれます。

そして何より、望遠鏡をのぞくたびにこの二つが目に留まるのは、配置の妙にあると言えるかもしれません。並び立つことで互いの個性が際立ち、観測者の心に残る印象を刻みます。月面を旅する視線の中で、彼らはいつも「ここにいるぞ」と静かに語りかけてきます。

     月の南部──そこには、ただの地形ではない、物語を持った地形があり、リリウスとジャコビは、その語り部となることでしょう。

【撮影日時、撮影機材、撮影法は前項(冬の月面拡大(1))に同じ。 2025年12月28日18時26分25秒-45秒で動画撮影(100フレーム/20秒)。処理後の静止画像を拡大トリミング。 自宅にて

冬の月面拡大 (1) ー南部の中型クレーター群:個性が際立つ密集地帯(2025年12月28日)


    2025年も押し迫った 12月28日夜は冬には珍しくシーイング良好でした。そこで普段はあまり注目されない月面南部のリリウス、ジャコビとリケトス、ヘラクレトス、キュヴィエなどの中型クレーターをじっくり観察しようと拡大撮影を試みました。このエリアでは直径50〜100kmの多数の中型クレーターが互いに複雑に入り組み、それぞれのクレーターが異なる生成年代、衝突角度や地質構造を反映し、個性的でユニークな構造を形成しており、月面の衝突履歴や月内部構造の推定に寄与しています。

【撮影機材、撮影法】スカイウオッチャーDOB16 (D400mm FL1800mm F4.5) + 手レビューパワーメイト2.5 x (合成4900mm F11.3)  ZWO ASI178MM、 バーダー IRパス (650mm以上) フィルター、 スカイウオッチャーEQ8赤道儀、 2025年12月28日18時26分25秒-45秒で動画撮影(100フレーム/20秒)。 自宅にて


2026/01/26

ふたご座に浮かぶ猿の横顔 ― モンキーフェイス星雲(NGC 2175)(by Seestar S50)(1月17日)

NGC 2175(モンキーフェイス星雲) は、ふたご座とオリオン座の境界付近に広がるHII領域で、赤く輝く散光星雲とその中心にある散開星団が特徴です。星雲全体の形が猿の横顔に似ていることから「モンキーフェイス星雲」と呼ばれています。この星雲は約6,000光年以上の彼方にあり、若い星々が活発に形成されている領域です。星の誕生によって放たれる強い紫外線が周囲の水素ガスを電離させ、Hαの赤い輝きを生み出しています。中心部の散開星団 NGC 2175 はこの領域の主要な光源であり、星雲の形状にも影響を与えています。

 比較的広がりがあるので全体像を捉えるには短焦点鏡筒が必要ですがHα成分が強いため短時間露光でもよく写るのが特徴です。冬の天の川付近にあるため星の密度が高く星雲と星野の対比も美しく写ります。

撮影条件(by Seestar S50): 2026年1月17日 23時19分、露出11分間(スタック処理あり)、自宅にて (岐阜市)


冬の夜空に舞う赤い鳥――かもめ星雲(IC2177)と若く高温な恒星(HD 53367)(1月18日)

 

 かもめ星雲(IC2177)は、いっかくじゅう座とおおいぬ座の境界に広がる壮大な散光星雲で、星形成が活発なHII領域です。かもめ星雲の頭部(IC2177、Sh2-292またはNGC2327)をSeestar S50で撮影。頭部の中央に輝く星は若く高温な恒星「HD 53367」で、この星が放つ強い紫外線が周囲の水素ガスを電離させ星雲を赤く染めています。星雲の頭部は反射星雲とHII領域が混在する複雑な構造を持ち、星形成の現場としても注目されています。

撮影条件(by Seestar S50): 2026年1月18日 00時53分、露出6分間(スタック処理あり)、自宅にて(岐阜市)

クラゲ星雲(IC443)— 超新星の記憶をたどる赤いクラゲ(1月17日)

冬の夜、ふたご座の足元に広がる幻想的な赤い星雲は「クラゲ星雲(IC443)」です。約5000光年の彼方、かつて大質量の星が命を終えた超新星爆発の残骸が今も宇宙空間に広がり続けています。

今回、Seestar S50で撮影したこの星雲は、淡く広がる赤色のフィラメントが繊細に描写され、宇宙を漂うクラゲのような姿を見せてくれました。特に星雲の東側(上方)の半月状ループ構造は爆発の衝撃波が周囲のガスと衝突して形成されたもので、立体的な広がりを感じさせます。星雲内には爆発後に誕生した中性子星「J0617+2221」がありX線や電波で観測されています。周囲には星形成領域「Sh2-249」も広がっており、星の死と誕生が隣り合う宇宙の営みを感じさせます。

長時間露光(1月17日23時48分から30分間)とスタック処理(10秒間の画像180枚)により、ノイズを抑えつつ赤色の輝きを自然に再現できたのは、Seestar S50の高性能と冬の澄んだ空のおかげです。画像右下の明るい星はふたご座の赤色巨星「テジャト(μ Geminorum)」です。クラゲ星雲のすぐそばに位置し撮影の目印としても知られています。

2026/01/24

月の暗部からレグルス出現(1月7日)

 遅まきながら1月7日のレグルス食の全体画像を掲載します。月とレグルの光量差が絶大なため両方を自然な形で1枚の画像に表現することは難しいようです。月は5秒間露出の動画44個のスタック原図をそのままモザイク作成に用いたため精細さに欠けますがご容赦ください。レグルは黄矢印の先にいます。出現直後の様子です。

2026/01/23

冬の雪国での天体撮影(1月17日)


 自宅は岐阜市北部にあり冬はおおむね太平洋側の気候になり晴れることが多いのですが、冬型の気圧配置が強まると20センチ程度の雪が積もります。そこで雪の重みで観測小屋の屋根が壊れるのを防ぐため雪が降りそうになると屋根をブルーシートで覆っています。しかし雪が溶けるまでの期間(1週間くらい)は望遠鏡を使えません。
 こんなときに便利なのはスマート望遠鏡です。Seestar S50は口径5cm、焦点距離25cmのアポクロマートレンズを使った最上級の屈折望遠鏡で、期待に違わぬ良像を見せてくれます。その性能の高さは多く人の記述があり説明を要しないと思いますが、特に私が気に入っているのは、1)スマホで室内からリモート操作できる、2)当地のように多少公害光のある空でも期待以上の画像が得られること、です。
 今回撮影の画像はオリオン座の馬頭星雲です。当地では通常の望遠鏡は特殊フィルター(QADフィルターなど)で迷光を除かないと星雲の形すら写りませんので、Seestarの優秀さを実感しています。
 撮影年月日、撮影条件は画像に記載あり。その他の画像も順次掲載します。





2026/01/07

レグルス食(1月7日)




                     
 しし座の1等星レグルスが満月過ぎの月に隠されました。月の明るい縁から隠され暗い縁から出てくるのが観察されました。残念ながら隠される様子は撮影できませんでしたが出現は撮影できました。食は終始好天に恵まれてラッキーでした。画像中の矢印はレグルスです。上の画像は下を部分的拡大したものです。
 撮影条件SW DOB16 反射(D400mm, FL1800mm)/EQ8-R赤道儀/コマコレクター (F4-5用)//バーダーIRパスフィルター695nm/ /ZWO ASI 178MM CMOSカメラ 41フレーム/10秒、2026年1月7日2時12分33秒~42秒に撮影した動画をスタック、ウエブレット処理し静止画像とした。


2026/01/02

バイイとシラー・ズッキウスベイスン (9月16日)(星ナビ2月号に入選)

 本作品は、「この秋の月面ハイライト1」として12月3日付でこのブログでも公表していますが、この度、1月5日発売の星ナビ5月号に採択され掲載されました。

【作者のコメント】バイイとシラー・ズッキウスベイスン といった月面を代表する大型クレーターを並置してみました。バイイの奥にははハウゼンクレーターの周壁や中央丘が見えます。

【星ナビのコメント】まるで、月をぐるっと回り込む周回軌道の宇宙船から見ているようです。月の縁が単純な円弧ではなく、凹凸のあるのがよくわかります。最大クレーターのバイイは、直径300km 以上あります。

【撮影機材、撮影法】スカイウオッチャーDOB16 (D400mm FL1800mm F4.5) + 手レビューパワーメイト2.5x (合成4900mm F11.3)  ZWO ASI178MM Baader IRパス (650mm以上) フィルター スカイウオッチャーEQ8 2025年9月16日5時51分 10秒間 (200コマ) Autostakkert!3/RegiStax6/ステライメージ9/Photoshop 2025  キャノンPIXUS Pro-10S 自宅にて

 

2026/01/01