2025/08/24

Seestar S50によるオメガ星雲(M17)とわし星雲(M16)(8月19日)

  Seestar S50で撮影した夏の南天の散光星雲第2弾です。オメガ星雲(M16)とわし星雲(M17)は銀河系の同じ渦巻腕に属しており、同じ巨大分子雲複合体と考えられています。
わし星雲(M16)は、へび座にあり、距離は7000光年で、散開星団(NGC 6611)と散光星雲(IC 4703)から成ります。ハッブル宇宙望遠鏡が1995年に撮影した暗黒星雲の柱状構造(中心部)は星が誕生する象徴的画像として知られています。
オメガ星雲(M17)は、いて座にあり、距離は5000年で、輝線星雲と散開星団(NGC 6618)から成ります。約35光年の広大なガス雲の中で数百の若い恒星が誕生しています。
 撮影時刻:オメガ星雲(M17)2025年8月19日20時52分~59分の7分間露出;わし星雲(M16)2025年8月19日20時34分~41分の7分露出。いずれもSeestar S50で自動撮影。

Seestar S50による干潟星雲(M8)と三裂星雲(M20)(8月19日)

 夏の南天を飾る散光星雲です。連日の猛暑で夜になっても気温は下がらず汗をふきふきの撮影でSeestarの登場となりました。当方の据え付け望遠鏡は南の低空が死角になっていることも理由です。SeestarならM8とM20を同一視野で撮れると思っていたのですが、M8だけでも2分割撮影が必要でした。思った以上にSeestar S50の視野が狭いこと言い換えると拡大率が高くその分高解像であることを再認識しました。

 撮影時刻:干潟星雲(M8)2025年8月19日19時36分~43分と同19時47分~54分で撮影した2枚のスタック画像をImage Composite Editorでモザイク化; 三裂星雲(M20)2025年8月19日20時22分~29分。いずれもSeestar S50で自動撮影。

2025/08/05

ジャンセンとレイタ谷(6月5日)

 ジャンセン周辺の拡大です。ジャンセンは直径200キロのクレーターで内部に細い峡谷(ジャンセン峡谷など)がありますが、その西側には幅の広い長いレイタ谷がクレーターを削りながら走っています。この細い峡谷(Rille)と太い谷(Valley)の存在がこの境域の特性と言えます。
 ジャンセンのほかにも、ポシドニウス、ガッサンディ及びアルフォンススといったクレーターの内部には細い峡谷が走っていますが、ジャンセンは、他のクレーターに比べて周壁の崩壊が進んでおり、内部の谷も控えめです。そのため地形としての「古さ」が際立ち、衝突後の長い年月におよぶ風化や地殻変動の影響が色濃く残っています。クレーター内の峡谷は、主に衝突後の地殻の緩みや火山活動によって形成されたと考えられています。一方で、レイタ谷は全長約500km、幅最大30kmにも及ぶ巨大な構造でありクレーター内の峡谷とはまったく異なります。成因としては、月全体の地殻活動に関わる大規模な力学的プロセスが関与していると考えられています。
  まとめると… ジャンセンなどのクレーター内峡谷は「局所的・構造的」な地形なのに、レイタ谷は「広域的・力学的」な地殻変動の痕跡で、スケールも成因も異なる月面地形の多様性を象徴しています。
撮影条件:スカイウオッチャー(SW DOB16 反射/SW EQ8R赤道儀/SWコマコレクター (F4-5用)/テレビューパワーメイト 2.5 x (合成f 4500mm F 11.25/バーダーIRパスフィルター695nm/ ZWO ASI 178MM CMOSカメラ 100フレーム/10秒、2025年6月1日19時20分56秒、自宅にて。



2025/08/02

太陽黒点群(8月2日)

 最近の太陽活動のトレンド
 太陽活動周期25(サイクル25)は現在、極大期のピークに達していて、今年(2025年)7月には、黒点群4114がX1.2やX1.9といった最大レベルの太陽フレアを発生させました。Xクラスのフレアは地球の電離層に影響を与え、通信障害やGPS の誤差を引き起こすことがあり、 8月以降も警戒が呼びかけられています。

画像の観察ポイント 半暗部と暗部の構造が明瞭で、主黒点の周囲に小黒点群が散在しており、磁場の複雑性が示唆されます。黒点の形状が楕円〜不整形で、成長期の活動領域であることがうかがえます。したがって、写っている黒点群は活動領域 AR 4114である可能性が高いようです。
撮影条件:ZWO社 Seestar  S50 (サングラス装着)により2025年8月2日9時1-2分に撮影。自宅にて。

2025/07/30

神酒の海(Mare Nectaris)—月面に広がる神話と科学の交差点(6月1日撮影)

 神酒の海は、直径約333kmの円形の「月の海(mare)」で、ギリシャ神話に登場する神々の飲み物「ネクタール」にちなんで名付けられました。その名の通り、科学的な魅力と詩的な響きを併せ持つ場所です。
地質学的な特筆点
 約38.5億年前、巨大隕石の衝突によって形成された盆地で、ネクタリス代から前期インブリウム代にかけて誕生しました。表面は後期インブリウム代の地層に覆われており、月の地質史を語る重要な証拠となっています。周囲にはアルタイ断崖ティオフィルス、キリルス、カタリナなどの印象的なクレーターが点在し、地形的にもドラマチックです。また、フラカストリウス、ダグエレなど多くの埋没クレーターが点在しています。
探査と現代の関心
 2024年、JAXAの小型月着陸実証機「SLIM」が神酒の海の西にあるキリルス・クレーター内の付近に着陸しました。直径わずか0.27kmの新しいクレーターが誕生し、SLIMの高精度着陸技術の象徴として「栞(Shioli)」クレーターと命名されました。日本の月探査における新時代の幕開けとされ、神酒の海がその舞台となったことは象徴的です。
撮影条件SW DOB16 ニュートン式反射/SW EQ8R赤道儀/SWコマコレクター (F4-5用)/テレビューパワーメイト 2.5 x (合成f 4500mm F 11.25/バーダーIRパスフィルター695nm/ ZWO ASI 178MM CMOSカメラ 200フレーム/10秒、2025年6月1日19時23分44秒、自宅にて。

2025/07/09

月面の色彩(4月7日)

 
 月面の色彩は、通常のカラー画像では目立ちませんが、色を強調する処理を施すことで、微妙な色の違いが浮かび上がります。大気による光線の吸収ができるだけないように天頂近くに高く昇った月齢9の月を対象に、ZWO社製ASI 183MC CMOSカラーカメラで撮影した画像をモザイク化しこれに彩度の強調処理を行いました。右側がPhotoshop CCで彩度を強調したもの、左側はカラー情報を破棄したのちに同様に彩度強調した(彩色されないことを確認)ものです。南(下)部の山岳地帯(クレーター密集地帯)と北(上)部の「氷の海」とその周辺は薄い茶に、晴の海は、縁が青でそれ以外の中心は茶に、「静かの海」、「豊かの海」は青色に染まっています。この違いは、主に海を形成する玄武岩の化学組成の違いに起因します。「静かの海」はチタン(TiO₂)含有量が高いので 青色が強くなり、「晴の海」はチタン含有量が低く鉄分が多いため 赤み強くなります。鉱物組成の違いが色彩に反映されており、これは月の火山活動の履歴マントルの化学的多様性を示唆しています。

撮影条件:スカイウオッチャーDOB16 ニュートン式反射 (D400mm、f1800mm)/スカイウオッチャーEQ8R赤道儀/ZWO ASI 183MC CMOSカラーカメラ 露出10秒/200フレーム、2024年4月7日21時54-58分、50コマ/35秒動画を処理。5枚の静画5枚をモザイク化。自宅にて。



2025/06/22

くじら銀河(NGC4631)(撮影:6月19日)


NGC 4631(くじら銀河) の特徴:りょうけん座にあり、地球からの距離は約3000万光年銀河円盤を真横から見る形になり、「くじら」に例えられます。銀河中心部では活発な星形成(スターバースト)が進行中で、超新星爆発も頻繁に起きています。すぐ隣にある矮小楕円銀河NGC 4627と重力的に相互作用しており、これがNGC 4631の形を歪めていると考えられています。銀河のみかけの大きさ(視直径)が約15.5×2.7分と大きく、明るさも9.3等級と明るいため観測しやすく人気があります。撮影条件SW DOB16反射望遠鏡 (D40 cm, FL 180 cm)/ キャノンEOS6D/ISO 6400, 露出3秒, 275枚をDSS (deep sky stack) スタッキング.   2025年6月19日22時31分-55分(総露出24分)、自宅にて。


ひまわり銀河 (M63)(撮影:6月19日)

 40㎝反射赤道儀で系外銀河を撮ってゆくにあたりいくつかの方針を試してみたいと思います。昨今は冷却CMOSカメラ全盛期ですが、これまでのキャノン一眼レフEOS6Dへの愛着も深く、空の明るい自宅での短時間撮影で満足できる撮影条件を探ってみました。ポイントは、1) 露出時間 を数秒以内とする、2) 撮影枚数を500枚以上とすることです。3) これにより多少明るい空でもQBPフィルター  など使わずに9,10等クラスの暗い銀河が写せるかどうか、4) 満足な画像に必要なスタック枚数を知る、などです。今回の標的は「M63ひまわり銀河」です。2秒露出で500枚撮影しました
 M63銀河はその渦巻の腕が花びらのように広がる様子がヒマワリを連想させることから、「ひまわり銀河」と呼ばれています。中心部は黄色みを帯びて明るく、外縁部にかけて淡く広がる構造が特徴的です。ハッブル分類ではSA(rs)bc型に分類される非棒渦巻銀河で、中心核の周囲にリング状の構造(rs)を持ち、緩やかな渦巻腕をもっています。地球からの距離は約2670万光年でみかけが8.6等級と比較的明るく、アマチュアにも観測可能です。
撮影条件SW DOB16反射望遠鏡 (D40 cm, FL180 cm)/ Canon EOS6D/ISO 6400, 露出2秒, 500枚をDSS (deep sky stack) スタッキング.   2025年6月19日21時01-22時09分(総露出68分)、自宅にて。

2025/06/17

マリウス周辺(2024年11月13日)

   

    マリウス周辺の地域、月の火山活動の痕跡を色濃く残しており、月の内部構造や熱史を探るための重要な研究対象です。特にマリウス丘の地下空洞は、将来の有人探査や居住施設の設置のための「天然のシェルター」としての可能性も秘めています。

マリウスクレーター(Marius Crater)は、月の北西部、「嵐の大洋(Oceanus Procellarum)」に位置する直径約41kmのクレーター。溶岩に満たされた浅いクレーターで、内部は比較的平坦。周囲には「リンクルリッジ(wrinkle ridges)」と呼ばれるしわ状の地形が南北に走っています。

マリウス谷(Rima Marius)は、非常に細いリル(rille:溶岩流の痕跡)で全長は数十kmに及びます。非常に細いため条件の良いときでないと観察が困難。

マリウスの丘(Marius Hills)は、多数の小さなドーム状の丘が密集しており月面でも最大級の火山性地形群で、かつての玄武岩質の火山活動によって形成されたと考えられています。日本の月探査機「かぐや」によって、直径約50〜70mの縦穴(skylight)が発見されました。これは地下に続く溶岩チューブ(lava tube)の入り口とされ、将来の月面基地候補地として注目されています。

撮影条件:SW DOB16反射/SW EQ8R赤道儀/SWコマコレクター (F4-5用)/テレビューパワーメイト 2.5 x (合成f 4500mm F11.5) /バーダーIRパスフィルター695nm/ ZWO ASI 178MM CMOSカメラ 200フレーム/10秒2024年11月13日22時15分,  自宅にて。


2025/06/15

湿りの海南部のドッペルマイヤー、リー、ヴィトロ (2024年11月13日)

湿りの海の南部には形の似たドッペルマイヤーリーヴィテロの3つのクレーターがあります(今年の5月30日付で当ブログにアップした「湿りの海とガッサンディ」の画像をご参照ください)。
 ドッペルマイヤーは、直径約64kmのクレーターで半分溶岩に埋もれています。通常、隕石の衝突でできるクレーターの中央丘は衝突時の反動で形成されますが、ドッペルマイヤーの中央丘はそれとは異なり、火山性の隆起でできた可能性があります。リーは小さなクレーターで溶岩流による埋没が進んでいます。ヴィテロ内部には隕石衝突によってできた複数の小クレーターが存在していますが埋没の度合いは小規模です。このように月のクレーターは単なる衝突の痕跡ではなく月の進化の過程を物語る貴重な存在です。
    撮影条件SW DOB16反射/SW EQ8R赤道儀/SWコマコレクター (F4-5用)/テレビューパワーメイト 5 x (合成f 9000mm F23) /バーダーIRパスフィルター695nm/ ZWO ASI 178MM CMOSカメラ 200フレーム/10秒2024年11月13日21時44分,  自宅にて。