2026/10/24

深まる秋の星空模様(10)ーSeestar S50によるクワガタ星雲の拡大画像(10月15日撮影)ー

                                                                                           
    クワガタ星雲(Sh2-157)は、カシオペヤ座にあるHⅡ領域(電離水素ガス星雲)です。内部では大質量星から放射される強力な紫外線によって水素ガスが電離され赤いHα光を放っています。画像は鮮やかな赤色が際立ちます。日本では「クワガタ星雲」の愛称が定着していますが、英名では Lobster Claw Nebula(ロブスターのはさみ星雲)とも呼ばれています。今回の画像で特に印象的なのは、星雲内部を走る明暗のコントラストです。明るい部分は、高温の若い恒星が励起した電離ガスで、その間の黒い帯状構造は、濃い塵や分子雲が背後の星雲光を遮っている暗黒星雲と考えられます。これらのガスと塵は長い年月をかけて現在の複雑な姿へ変化してきました。クワガタ星雲一帯は現在も星形成活動が続いている領域です。近傍のシャボン玉星雲(NGC7635)は大質量星の恒星風によって泡のような球殻構造をしています。しかしクワガタ星雲では、不規則なフィラメント、発光領域や暗黒帯が複雑に絡み合い、同じ星形成領域でありながら異なる表情を見せています。

 Seestar S50の70分積算画像を拡大してみると、広視野画像では気付かなかった微細な構造が次々と現れました。クワガタ星雲は天体写真家によって作品化されることの多い対象ですが、スマート望遠鏡でもその複雑な骨格が十分に楽しめるようです。

撮影データ:Seestar S50 / 2026.10. 15. 03:35、70分露光、自宅にて

深まる秋の星空模様(9)ー拡大シャボン玉星雲(10月14日撮影)ー

シャボン玉星雲(NGC7635)の正体 
 シャボン玉星雲はカシオペヤ座にあるHⅡ領域(電離水素ガス星雲)で、地球から約7,100~11,000光年の距離にあります。中心には8.7等級の大質量星 SAO 20575(BD+60°2522)が存在し、その猛烈な恒星風によって周囲のガスが押し広げられ、直径約6〜7光年の球殻構造が形成されています。この泡は完全な球体ではなく、中心星がやや片側に寄って見えます。これは周囲の星間ガスの密度が均一ではなく、膨張速度に差が生じているためと考えられています。1787年にウィリアム・ハーシェルによって発見され、その独特な姿から世界中の天体写真家に愛され続けています。
撮影データ:Seestar S50 / 2026.10. 14. 21:53、23分露光、自宅にて

深まる秋の星空模様(8)ーM52散開星団からシャボン玉を経てクワガタ星雲へ(Seestar S50 モザイク撮影)ー

 
 秋の天頂高く輝くカシオペヤ座。その豊かな天の川の中には、美しい散光星雲や星団が密集する壮大な星域があります。今回、Seestar S50のモザイク機能を利用して撮影したのは、シャボン玉星雲(NGC7635)を中心に、M52散開星団、クワガタ星雲(Sh2-157)、NGC7510、Sh2-159などを一枚に収めた広視野の作品です。

画像を見ると、右側でひときわ明るく輝くのがシャボン玉星雲(NGC7635)。その左には昆虫のクワガタを思わせる形状で人気のクワガタ星雲(Sh2-157)が広がり、さらに若い星々が集まる散開星団M52が秋の夜空に宝石を散りばめたような姿を見せています。

撮影データ:Seestar S50 / 2026.10. 15. 03:37、104分露光、自宅にて


深まる秋の星空模様(7)ーNGC247 静かに輝くスカルプター銀河群の隠れた名脇役(撮影10月7日、掲載10月24日)ー

                   

 今回撮影したのは、くじら座の方向約1,100万光年先にある渦巻銀河 NGC247(Caldwell 62) です。NGC247は私たちの銀河系から最も近い銀河群のひとつである「スカルプター銀河群」に属し、同じグループの有名なNGC253(スカルプター銀河)とは重力的なつながりを持つています。NGC247は、表面輝度が低くて淡い光のため短時間露光では存在感が薄くなりがちですが、今回は、画像処理によって銀河円盤の広がりや青く輝く若い恒星集団が浮かび上がりました。派手なNGC253とは対照的な、静かで繊細な美しさを持つ銀河です。特に予想以上に豊かな色彩が現れたことが今回の撮影で最も印象的でした。
撮影データ:Seestar S50 / 2026.10. 08. 02:30、34分露光、自宅にて

2026/10/23

深まる秋の星空模様(6)ー南天のアンドロメダ銀河ともいえる堂々たる姿」(ちょうこくしつ座銀河 NGC253)(10月7日)

 
NGC253は、約1,100万光年彼方にあるちょうこくしつ座の渦巻銀河で、見かけの大きさが約27分もある南天屈指の銀河です。銀河中心部では現在も活発に星形成が続き、新しい恒星が誕生しています。明るい中心核を取り巻く複雑な暗黒帯や不規則な腕構造が確認でき、NGC253は「ちょうこくしつ座銀河群」の中心的存在でもあります。この銀河群には近くのNGC247も属しており、両者は重力的に関連する近縁銀河と考えられています。日本からは低空のため意外に知名度が高くないNGC253。しかし拡大してみるとその複雑で力強い姿は、「南天の名銀河」にふさわしい天体です。次回は、このNGC253の良き隣人であるNGC247も紹介してみたいと思います。

撮影データ:Seestar S50 / 2026.10. 07. 00:11、52分露光、自宅にて


冬の足音(4) ー馬頭星雲(Barnard 33)と燃える木星雲(NGC2024)ー(10月8日撮影、10月23日投稿)

                
オリオン座三ツ星の東端にあるアルニタク付近を撮影しました。中央の黒いシルエットが有名な馬頭星雲(Barnard 33)で、地球から約1,300〜1,500光年先にある暗黒星雲です。その背後に広がる赤い発光帯はIC434と呼ばれる水素ガス星雲で、その赤い光を背景にして馬の頭のような姿が浮かび上がっています。画像上部には同じく星形成領域として知られる燃える木星雲(NGC2024)も写っています。

今回はSeestar S50で70分間の積算撮影を実施しました。スマート補正機能を使うことで、馬頭星雲の特徴的なシルエットやIC434の赤い輝き、燃える木星雲の複雑なガス構造まで美しく表現することができました。コンパクトなスマート望遠鏡でここまで撮影できる時代になったことに改めて驚かされます。

撮影データ:Seestar S50 / 2026.10.08. 05:07、70分露光、自宅にて


2026/10/22

冬の足音(3)IC 342(きりん座)—「隠された銀河」の姿がここに(10月16日撮影、22日掲載)

天の川の厚い星間物質に隠れながらも、IC 342 は渦巻腕の青い若い星々、中心部のHII領域、そして複雑な塵の模様が織り成す美しい姿を見せてくれる「隠された銀河」です。わずか1000万光年という近さゆえに、星形成の活発な様子や銀河構造が小口径機材でもしっかり捉えられ、撮影者だけが味わえる“幕の向こうの宇宙”が広がっています。

撮影データ:Seestar S50 / 2026.10.12. 22:59、42分露光、自宅にて

夏の名残 (2) ー NGC 6888(クレセント星雲) はくちょう座に広がる“風の衝突”の記念碑ー

 

 はくちょう座の散光の中に浮かぶNGC 6888(クレセント星雲/三日月星雲)は、中心にあるウォルフ・ライエ星 WR 136が放つ猛烈な恒星風によって形成された、直径約25光年の衝撃波バブルです。過去のゆっくりした恒星風と現在の高速風がぶつかり合い、複雑なフィラメント構造と赤いHα・青緑のOIIIが織りなす美しい輝きが生まれています。

 今回のSeestar S50による撮影では、スマート補正+星サイズ35%の処理により、星雲の繊細な縁の構造が際立ち、52分の積算とは思えないほどの立体感が得られています。WR 136は将来、超新星爆発を起こす可能性が高いとされており、この星雲はその“予兆”を示す貴重な天体としても注目されています。撮影データ:Seestar S50 / 2026.10.06. 21:09、52分露光、自宅にて

2026/10/21

冬の足音(2)ー銀河系のタイムカプセル」(かに星雲 M1)ー(10月16日撮影、21日ブログ掲載)

 

M1(かに星雲)は、1054年に記録された超新星爆発の残骸で、約6,500光年の距離に位置する銀河系内の超新星残骸です。中心には中性子星「かにパルサー」があり、強烈な磁場とエネルギーによって星雲全体を照らし続けています。

 今回の17分露光の画像では、赤・青・白が入り混じる複雑なフィラメント構造が印象的で、爆発で飛び散ったガスが今もなお高速で広がり続けている様子がうかがえます。赤い部分はHα(電離水素)、青白い領域は酸素やヘリウムの輝線が中心で、元素ごとに異なる発光が織り成す色彩は、”超新星残骸ならではのスペクトルの多様性”を示しています。かに星雲は現在も毎秒約1,500kmの速度で膨張しており、星雲内部の繊維状構造は磁場と高速粒子が絡み合うことで形成されたものです。撮影データ:Seestar S50 / 2026.10.17. 05:05、17分露光、自宅にて

深まる秋の星空模様(5)(画像処理の追加)ーらせん星雲(NGC 7293)(10月1日)ー

    以前ブログ投稿した(10月1日撮影、10月5日ブログ掲載)らせん星雲の画像に荒れの気にならない程度のウエブレット処理、画像再生処理を加えてみました。これまでの軽い処理に少し味付けするだけでも思った以上に効果があるかもしれません。

冬の足音(1) ー主系列上で輝く若い散開星団、プレアデス(すばる)星団(M45)ー

プレアデス星団(M45)は、約444光年の距離にある若い散開星団で、青白いB型星が集まる姿から「すばる」「七姉妹」として古くから親しまれてきました。 星団の年齢は1億〜1億2500万年 とされ主系列上で輝く若い段階にあります。今回、Seestar S50 による 2×2モザイク撮影(総露出61分) でプレアデスを広く捉えました。モザイク合成により4倍の視野が確保され、星団を包む淡い反射星雲が自然な形で描出されています。反射星雲は、星団自身の生成残骸ではなく、星団が現在通過している別の星間塵の雲が青白い星の光を散乱していると考えられています。星団の星々は共通の年齢・距離・化学組成を持つため、天文学では星の進化モデルの検証に使われる基準星団としても重要な役割を果たしています。

今回のモザイク撮影では、星団の広がり(約1〜2度)を視野いっぱいに収めることで、すばる特有の青い輝きと星間塵の繊細な模様がより立体的に感じられます。2月のモザイク撮影と比較すると、天頂付近での透明度の高さも相まって、反射星雲の階調が一段と滑らかに表現されている点が印象的です。

撮影データ:Seestar S50 / 2026.10.16. 05:37、61分露光、自宅にて

2026/10/18

夏の名残(1)ーM27 亜鈴星雲(アレイ星雲)ー

こぎつね座のM27(亜鈴星雲)は、鉄アレイの形状からその名が付いた、代表的な惑星状星雲です。地球から約1,200光年、視直径8×5.6 分、7.4等級で明るいため人気の高い対象です。この星雲は、寿命を迎えた恒星が外層を放出し、中心に残った白色矮星が周囲のガスを電離して輝かせています。季節的には夏の名残の天体ですが、最近は西に傾く時間帯が増え、星雲の周囲に広がる淡い外層ガス(ハロー)が観察しやすくなりました。今回の撮影では、Seestar のスマート補正機能を活用して前景の星を取り除き、星雲外縁の淡いガスが幾重にも重なる様子をより明瞭に捉えることができました。撮影データ:Seestar S50 / 2026.10.10. 20:33、27分露光、自宅にて

 

2026/10/10

深まる秋の星空模様(4)ー西に傾く北アメリカ星雲(NGC7000)-

はくちょう座に広がる北米星雲(NGC 7000)を、今回はほぼ全域が収まる構図で捉えました。同じSeestar S50による撮影でも、以前紹介したペリカン星雲とのツーショットとは雰囲気が大きく変わり、星雲の輪郭や暗黒帯の入り組んだ形がより際立って見えます。約2,000光年彼方に広がる巨大なHII領域で、若い星々の強い紫外線によって水素ガスが輝き、北米大陸のような特徴的な姿を形づくしています。今回の構図では、その“地形”のような広がりが一枚の中にすっきり収まり、星雲全体のダイナミックさがより伝わってきます。撮影データ:Seestar S50 / 2026.10.02. 05:43、57分露光、自宅にて


 

深まる秋の星空模様(3)ー近傍大銀河の静かな渦 ― M33(10月3日)

 さんかく座の M33銀河は、地球から約 300万光年の距離にあり、天の川銀河、アンドロメダ銀河とともに局所銀河群を構成する 渦巻銀河です。特徴は、中心核が小さく腕がゆるやかに広がる“フロキュラ構造(斑状構造)”が発達しています。腕の各所に星形成領域があり、今回の62分露光の画像でも、銀河全体に散らばる淡い輝きが捉えられています。また、ほぼ正面から渦巻構造を観察できるため、腕の模様や星形成領域の分布が分かりやすく、天体写真として“構造の美しさ”が際立つ対象です。Seestar S50のようなコンパクトな撮影システムでとらえられるダイナミックな姿には興味が尽きません。撮影データ:Seestar S50 / 2026.10.02. 22:41、62分露光、自宅にて

2026/10/09

深まる秋の星空模様(2)ー(Sh2-108 / はくちょう座サドル付近)ー(10月2日)

秋雨と台風で長く星空を待ち続けましたが、ようやく訪れた秋晴れの夜に、はくちょう座サドル付近の散光星雲 Sh2-108 を捉えました。サドル(γ Cygni)は強い紫外線を放つ若い大質量星で、その周囲には電離した水素ガスが広がり、赤い輝きとして写し出されます。今回の領域は特にHα成分が豊富で、暗黒帯が複雑に入り組むことで立体的な構造が際立ちます。

Sh2-108は大規模な「サドル雲(Sadr Region)」の一部で、星形成の痕跡やガス流の非対称性が議論される領域として近年の研究でも注目されています。Seestar S50による撮影ながら、淡い散光成分まで滑らかに描写され、秋の夜空に広がるはくちょう座の中心部のダイナミックな姿を楽しむことができました。

撮影データ:Seestar S50 / 2026.10.02. 00:49 / 83分露光、自宅にて

2026/10/05

深まる秋の星空模様(1)ーらせん星雲(NGC 7293)(10月1日)ー

                                                                                                                                                                 

らせん星雲(NGC 7293)を Seestar S50 で 97分露光にて撮影しました。地球から約 650 光年、みずがめ座に位置する代表的な惑星状星雲です。太陽レベルの恒星の終焉に形成された「死にゆく星の最後の姿」です。中心には白色矮星が残り、その強い紫外線が周囲のガスを電離させ、青緑の OIII(酸素)と赤い Hα(⽔素)の輝きが二重構造を形作っています。この星雲は、外層のリングが複雑なフィラメント構造を持ち、眼の虹彩のように見えるため「宇宙の眼」とも呼ばれることがあります。撮影データ:Seestar S50 / 2026.10.01. 21:56 / 97分露光 自宅にて。

2026/09/26

NGC 6960 ーはくちょう座・網状星雲 中央部~西側ー(9月25日)

                 

台風一過、雲の切れ間を約8時間の撮影体制に入り、実質のスタック時間は60分ほどでしたが、はくちょう座の「網状星雲(Veil Nebula)」中~西側の広い領域をSeestar S50の4枚モザイク撮影で捉えました。この星雲は約2万年前の超新星爆発の残骸の残骸で距離は 2,100〜2,400光年、みかけの大きさは 約3度(満月6個分)もあります。西側のアークは NGC 6960(Caldwell 34)、52 Cygni 星が 目印です。「魔女のほうきとも呼ばれ、酸素(OIII)や水素(Hα)が衝撃波で励起されて細かく裂けたフィラメント構造が浮かび上がります。撮影条件:Seestar S50 2026年9月25日00:18 露光時間52分 岐阜市内にて

活動期の静かな太陽面(9月25日)

 

初秋の太陽面には、小さな黒点がいくつか点在していました。 一見すると穏やかな姿ですが、最新の観測では太陽には8〜9の活動領域が存在し、Cクラスのフレアが続くなど、内部では活発な変化が進んでいます。 黒点が大きくなくても、太陽風は高速度流の影響下にあり、地球の磁場も静穏から活発へと揺れ動いています。 この写真は、太陽活動期の“静かな一日”を切り取った一枚であり、太陽が常に変化し続けていることを静かに物語っています。 撮影データ:Seestar S50 、2026年9月25日10時52分、岐阜市にて


2026/09/11

初秋の宝石箱(6)Sh2-158(NGC 7538)は,成長しつつあるケフェウス座の星形成領域(8月19日)

 

ケフェウス座とカシオペア座の境界付近に位置するSh2-158(NGC 7538)は、星形成が活発に進む明るい散光星雲です。地球からの距離は約9,100光年。星雲内部では若い大質量星が強い紫外線を放ち、周囲の水素ガスを電離させることで赤い輝きを生み出しています。

この領域が特に注目される理由は、巨大な原始星が誕生している現場を直接観測できる数少ない星雲のひとつである点です。NGC 7538内には、太陽の約300倍の質量を持つと推定される原始星(NGC 7538 IRS 1)が存在し、強烈なジェットやアウトフローを吹き出しながら成長している様子が電波観測で捉えられています。また、すぐ東側には泡星雲(NGC 7635)が位置し、両者は同じ巨大分子雲複合体の一部として互いに影響を及ぼしながら進化しています。今回の画像では、赤い電離水素の輝きと、背景に広がる暗黒星雲の入り組んだ模様がよく写り、NGC 7538のダイナミックな星形成環境が印象的に捉えられています。

撮影データ:Seestar S50 / 2026.08.20 23:33 / 60分露光 自宅にて。

2026/09/07

バイイとシラー・ズッキウスベイスン(2025年9月16日撮影)

 星ナビ2026年2月号に採択され掲載されていた、「バイイとシラー・ズッキウスベイスン」が、アストロアーツ社の2027年カレンダー、「星空こよみ2027」を飾る13作品の一つに選ばれました。4月号ページの上半分です。最近、月の写真が天文雑誌にあまり掲載されなくなったので、これは大変うれしいことです。
 画像および撮影データは、本ブログの2026年1月2日掲載分(古川天文趣味工房: バイイとシラー・ズッキウスベイスン (9月16日)(星ナビ2月号に入選))をご覧ください。